花蔭の迷夢(はなのゆめ) 本編~淫獄に囚われた桜花
番外編~雪花秘事
STORY
【 本編:淫獄に囚われた桜花】
元禄-江戸麹町の一角に“桜館”と呼ばれる中堅旗本の屋敷があった。
幕府の勘定吟味改役職に就く当主・有馬忠芳には二人の男子があり、長男の真芳はすでに成人し、次男で部屋住み(※1)の真赭丸(まそほまる)は、数えで十六歳になる。
真赭丸は佐伯隼人(さえきはやと)という青年家臣と身分を超えた相思相愛の関係にあり、二人は家人の目を盗んで、しばしば情事に耽っていた。
父や兄とは住を異にし、庭に面した離れに身を置く真赭丸の身の回りの世話は、隼人が一人でこなしている。離れには滅多なことがない限り、他の家臣たちは来ない。愛する者に身も心も委ね、真赭丸は穏やかな日々を送っていた。
ところが、桜が見頃を迎えたある日、真赭丸におもわぬ仕官の話が持ち上がった。父の上役にあたる目付・田辺が、小姓(※2)見習いとして預かりたいと言ってきたのだ。
端麗希有な若衆(※3)と噂される真赭丸に目をつけた田辺は、彼を色小姓として老中・柳沢保明(※4)に献上し、自分の出世の道具にしようとしていた。
それをうすうす察していた有馬忠芳は話を断るが、それがもとで田辺の恨みを買い、身に覚えのない罪に問われて他家に幽閉されてしまう。
有馬の家を断絶から救う手だては、田辺の袖に縋るしかない。兄と家臣たちから、出仕を懇願された真赭丸は、お家のために小姓見習いとして田辺家にいくことを了承する。
しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、淫らな調教の日々だった───。
※電子書籍配信用に加筆した改訂版
【番外編:前日譚〜雪花秘事(せっかひめごと)】
本編より少し前、ある雪の降る日に隼人と真赭丸は、日本橋の書籍問屋に本を買い行った。
そこで目にしたのは淫らな絵巻物で───。
概要
【著者】鷲尾滋瑠
【作品初出】青磁ビブロス刊マガジンBE×-Boy(1994年10月号掲載)
【単行本】茜新社刊:オヴィスノベルズ(1997年3月「滄の残像」に収録)
【電子書籍】茜新社:オヴィスノベルズ(〜2019年1月まで)
【電子書籍Kindle配信】オリジナルレーベル
タイガードラマスタジオ Altair BL文庫(2020年7月6日〜)